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家での暮らし

大分の整理収納アドバイザー 板井善江です。


今年の春頃から続くコロナ自粛の中で、今までゆっくり時間をかけてなかなか出来なかったことで、やっとできたこと。
それは、実家の片付け です。


結婚を機に実家を離れた私ですが、その頃、仕事がとにかく忙しく、新生活をスタートさせることと仕事だけで日々時間がない中、実家で使っていた自分の部屋を完全に片付けてしまわないまま、必要なものだけを持って家を出て新居に住み、必要なものを随時取りに帰るようなことをしていた新婚当初。

それからまもなく長男の子育てが始まり、次は仕事と子育てで時間に追われ、実家の部屋を落ち着いて片付けられないまま…の状態でした。


そして今春、今までに経験したことのない自粛生活の中で時間ができ、ついに実現。

まずは、当時私が使っていた部屋からスタート。
そこを時間をかけて片付けた後、高齢の両親が住む家はよくよく見渡してみると、前に比べて、すぐ手に届く距離の場所にモノが置かれている状態へと変わり、それぞれの部屋でモノが増えている印象。

さらに細かいところや高い場所などでお掃除が行き届いていなかったり。

親がもっと若い頃にはなかった変化が随所に現れていて、キッチンやリビング、寝室、客間など様々な箇所を順番に片付けし、お掃除をしていきました。



そうすると、私が子供の頃に母が頻繁に使っていたもので今はほとんど使わなくなったモノをたくさん目にし、ひとつひとつ整理をしながら懐かしい思い出がたくさん思い出されました。


日用品は、何気ない生活のシーンで使われていたモノばかりで、それを使っていたシーン、その頃の家族の様子、私自身の記憶が次々に蘇ってきました。


また、丁寧にお掃除していく中で、今までも実家に行っていたもののほとんど意識していなかった所、
例えばキッチンや廊下の壁、天井、カーテン、換気扇、客間の飾り棚などを掃除しながら、子供の頃この家で住んでいた頃の記憶、その頃の両親の姿などを思い出しては、温かい思いに包まれました。


時間をかけて丁寧に実家と向き合って感じたこと。
それは、私は間違いなくこの家で育ってきたんだという確信、そして、今となれば過去である実家で暮らしていた時間が愛おしく感じられ、目にする様々なモノから蘇る思い出に、家への感謝、親への感謝を感じられずにはいられませんでした。

結婚するまで、家を離れたまとまった時間といえば、大学時代に経験したイギリス留学時。

今でもはっきりと覚えていますが、当時イギリスで過ごした寒い季節に、決まって恋しく思い出していたシーンが、暖かい実家の居間のコタツに私が座って、台所に立つ母を見ているシーン。

実家での何気ない日常の風景でしたが、いざ実家を離れるとそんな日常の当たり前の一コマが妙に恋しくなり、もしここにドラえもんの〝どこでもドア“があったら、留学中ながら、一瞬その風景に戻れたらなぁ…なんて考えたりしていたこともありました。



実家を片付けながら、過去の時間を懐かしく思うと同時に、いい感じに時間を重ねて味が出てきた実家の建物や、歳を重ねて人としてさらに丸く優しくなった両親に、年齢を重ねてきたからこその魅力も感じました。


これからは、より快適に過ごせるように、今の年齢に合った収納を作ってあげたいと思っています。



最近読んだ本の話になりますが、心に残る一節があります。


その本で、著者が子供の頃に住んでいた家の近くを14年ぶりくらいに通り、久しぶりにその建物を目にした時の気持ちを書き綴った箇所があります。


すでにそこを離れて時間が経ち、別の場所で住んでいる著者が、懐かしい場所を訪れて鮮明に蘇る子供の頃の何気ない風景。
次々に思い出される記憶とともに、今は誰も住んでいないその家が手入れもされず、子供の頃の記憶に蘇る家とは様変わりしたその建物に切なさを覚えたことも記されています。


そしてわたしの心に響いた箇所が次の一節です。





「あなたの家は、ただ雨露や、暑さ寒さをしのぐためのものではない。ましてやセンスのよさを見せびらかして、人に自慢するためのものでもない。

家は人生でいちばん大切な場所。
外の世界でつらい目に遭っても、家はあなたを守り、癒してくれる。家には座り心地のよいソファーや、あたたかいベッドなど、目に見えるかたちの安らぎもある。けれども家からもらうエネルギーには、目に見えない安らぎもたくさんある。

いまの家に住んでいるあいだに、あなたにもたくさんの思い出ができるだろう。初めて経験することも、きっといろいろあるはず。子どもがいれば、いくつになっても、その家のことを覚えているだろう。
その家ならではの特徴を、どんな小さなことでも、ずっと忘れないだろう。」

〜「フランス人は服を10着しか持たない2」より〜






実家の片付けをした後に読んだこの本。
子どもの頃の私の成長を見守ってくれたのは実家。

そして、自分の家族を持ち、現在住んでいるわが家。

家を大切にすること、家族が暮らしやすい空間を作っていくことは、家族がより快適に安心して過ごせる人生の中の大切な「居場所」を作っていくことだと思います。


私も子どもたちが大人になった時に、
家で過ごした時間や、何気ないシーンを思い出して温かい気持ちになってくれるようなわが家なりの「家」を作っていきたいと思います。